嫉妬の渦巻く将棋界(追悼・河口俊彦)⑨

嫉妬こそ棋士を棋士たらしめているのであり、嫉妬心の強いほど将棋が強い。

―――河口俊彦

『覇者の一手』(日本放送出版協会、1998年)より
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 たとえば、ある棋士が活躍して世間の話題になる、また、テレビに頻繁に出るようになる。
 そんなとき、他の棋士はよく、「将棋の普及になって良いことです」などと優等生的なコメントを返したりする。
 だが、そんなのは嘘っぱちだと河口俊彦は棋士の本音を暴露する。

 芹沢博文や内藤國雄がテレビで人気者になり、講演会に引っ張りだこだった頃、「講演がうまくなると将棋が弱くなる」と揶揄した棋士がいた。
 まあ、唾をペッと吐きかけるようなもの。
 その人物が誰あろう、大山康晴である。

 この強烈な嫉妬心こそが棋士の本質、棋士の命。
 嫉妬心が強いほど将棋が強い。

 「将棋界の内部には、嫉妬が渦巻いている。棋界の物事は、嫉妬心で決まる、と言いたいくらいだ」

 こういう筆致は河口の独壇場。
 こんな書き手はもう出てこないかもしれない。

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