変わり種Jazz【31】Jack McDuff "Tough ‘Duff"【1960】

今回紹介するJack McDuffの”Tough ‘Duff”ですが、ファースト・ジャズとしてうってつけのとっつきやすい作品を紹介しているカテゴリ「First Step:どれから聴くか」で取り上げるか、あるいは少しマニアックな路線のマイナー作品を紹介するカテゴリ「変わり種Jazz」として紹介するか、悩ましいタイプの作品です。

といいますのも、オルガン・ジャズは基本的にアウトサイダー的なポジション。スウィング・ジャズ期も、モダン・ジャズ期もジャズのメインストリームから外れたカウンター・カルチャー的な存在です。一般的なジャズ史に忠実に従えばそうなります。その一方でオルガン・ジャズ作品にはノリの良いソウル・ジャズ系作品が多いので人気があり、レコードは当時はよく売れたそうです。評論家受けはいまひとつですが、一般的な人気は高かったという感じになるでしょうか。

ですので、良い意味で「変わり種Jazz」がオルガン・ジャズ奏者作品の定位置かな、と思います。しかも”Tough ‘Duff”は楽器構成が極めて特異でもあります。典型的なジャズ作品とは言いがたいので、やはり「変わり種Jazz」で取り上げるのが妥当ではないかと考えました。

ちなみに、これまで紹介したオルガン・ジャズ作品は以下の通りです。

40枚目:Jimmy Smith “Crazy ! Baby”【1960】
66枚目:Jimmy Smith “The Cat” 【1964】
変わり種Jazz【6】Jimmy Smith “Got My Mojo Workin’/Hoochie Cooche Man”【1965/1966】
73枚目:Jimmy Smith “Organ Grinder Swing”【1965】
ライヴ盤列伝【2】Jimmy Smith “Root Down”【1972】
巨人、邂逅ス【8】Jimmy Smith/Wes Montgomery “The Dynamic Duo”【1966】

以上6本の記事はオルガン・ジャズの唯一神、ジミー・スミス作品。ジャズ・オルガン奏者は二種類に分類可能で、ジミー・スミスとそれ以外。個人的には、ジミー以外はどんぐりの背比べ状態と考えております。

57枚目:Jimmy McGriff “Electric Funk”【1969】
変わり種Jazz【2】Jimmy McGriff/Richard “Groove”Holmes “Giants of Organ”2作品【1974】

ジミー以外はどんぐりの背比べ状態ではありますが、2番手グループの中でトップクラスにあるのがマクグリフ。ただ、このあたりの評価は個人の好き嫌いに大きく左右されます。

変わり種Jazz【8】Baby Face Willette “Face To Face”【1961】

変わり種Jazz【14】Ronnie Foster “Sweet Revival”【1972】

変わり種Jazz【19】Brother Jack McDuff/David Newman “Double Barrelled Soul”【1967】

変わり種Jazz【21】Shirley Scott “Shirley Scott and the Soul Saxes”【1968】

これまでそれなりの数のオルガン・ジャズ作品を紹介してきましたが、ジミー作品を除くとほとんどが「変わり種Jazz」としてでした。良い意味でオルガン・ジャズは常に亜流。19世紀末にダンス・ミュージックとして産声を上げたジャズは、エリントン、コルトレーン、コールマンら先鋭的なジャズメンの努力により、誕生から半世紀の時を経て高度な芸術形式と評価されるようになりました。ところが、オルガン・ジャズはいつの時代もノリの良さ優先。1960年代に入ってもアヴァンギャルド化することもなく、もちろんフリー化することもなく。そもそもジャズはダンス・ミュージックだったという原点を頑なに守るかのごとく。あるいは変化を拒絶するかのごとくです。隙間産業というのか、シーラカンス的というべきか。偉大なるマンネリと言うことも可能です。代り映えのしない設定のB級映画を観るようなもの。ですが、そのサブカル的なポジションがオルガン・ジャズ愛好家には逆に堪らないわけです。


Jack McDuff “Tough ‘Duff”【1960】
ジャック・マクダフ 「タフ・ダフ」【1960年】

マクダフに関しては、以前「変わり種Jazz【19】Brother Jack McDuff/David Newman “Double Barrelled Soul”【1967】」で、サックス奏者David “Fathead” Newman【過去記事】とのCo-Leader作を紹介したことがあります。

カルテットですが、楽器構成が異質です【参照:wiki “Tough ‘Duff”】。

Organ:Jack McDuff

Tenor:Jimmy Forrest【過去記事
Vibraphone:Lem Winchester
Drums:Bill Elliot

オルガン・カルテットと言えば、通常はオルガン/テナー/ギター/ドラムスである場合がほとんど。ですが、今作ではギタリストがおらず、ヴァイブ奏者レム・ウィンチェスター【wiki】が呼ばれました。

1曲目収録”Smooth Seilling”。

四人全員のアンサンブルでスタートし、0:50にフォレストの滑らかなソロが始まります。2:20からウィンチェスター。4:00からマクダフ。際立った特徴がある訳ではなく、オルガン・ジャズのルーティーンと言ってしまえばそれまでなのですが、オルガン・ジャズ愛好家にとってはこの上なく心地よいサウンドということになります。

6曲目収録”Tough ‘Duff”。ねちっこいブルーズです。

スタートから2:30までオルガンとドラムスのみ。その後、フォレストのソロ。4:00からウィンチェスター。

オルガン・ジャズの常ではあるのですが、「大傑作だ!絶対に聴くべきアルバムだ!」と声を張り上げて今作をお薦めするという訳ではなく、いつものオルガン・ジャズ・アルバムの一枚として紹介しました。良くも悪くもアルガン・ジャズとは大抵こんな感じ。繰り返しになりますが、偉大なるマンネリといった感じになります。ですが、独特の世界観がたしかにあり、一度ハマるとなかなか抜け出せない魅力があるのもたしかです。

ただ、wikipedia:Jack Mcduffのページ下部にあるDiscographyを是非ともチェックしてみてください。膨大な数のアルバムをリリースしております。これはwiki:Jimmy McGriffWiki:Shirley Scottら多くのオルガン・ジャズ奏者にも当てはまります。リリース数の多さは、煩型の評価はいまひとつでも、一般的な人気の高さを証明するもの。評論家人気と一般リスナーの人気の間にギャップが生じており、このギャップこそが実は音楽などの面白いところだと思ったりもします。

最後に貴重なライヴ映像をひとつ。

1964年、フランス・アンティーヴ・ジャズ・フェスでのライヴ映像。

オルガンを揺らしながら弾くマクダフ。しばしばマクダフの手元が映ります。こういった映像はなかなか観ることができません。ギターは若き日のジョージ・ベンソン。彼はマクダフ・グループでサイドマンとして頭角を現し、後にスター・ギタリストとして世に出ました。

 

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