変わり種Jazz【46】Lou Donaldson "Hot Dog"【1969】/"Everything I Play is Funky"【1970】

ジャズという音楽ジャンルの興味深い点のひとつとして、その振幅の大きさを挙げることが可能です。振幅の大きさとは何を意味するのかといいますと、様々なスタイルのジャズが併存していたという意味です。特にモダン・ジャズ黄金時代後期の1960年代はその傾向が強かったということができます。

コルトレーンのような真摯にジャズの進化と向き合った者もいれば、オーネット・コールマンのようにジャズの枠組みを根本から変えるべくフリー・ジャズ路線を開拓した者もいました。彼らは時にラディカルに「新しいジャズ」への探求を推し進めたということになります。その一方で、ブラジルの音楽であるボサ・ノヴァのリズムを導入した聴きやすいボサ・ノヴァ・ジャズが登場し人気を博したり、ロックやファンクのような人気上昇中だった他ジャンルに接近したRock Jazz/Jazz Funk的な作品もありました。もちろん、良い意味で愚直にスウィング・ジャズ、ハード・バップを演り続ける者もいました。ひとことでジャズと言っても、特に1960年代から1970年代前半くらいの作品は玉石混交で、多種多様でカオス的な状況だったと考えるべきかもしれません。

今回はLou Donaldoson作品を紹介するのですが、彼のスタイルは一般的にSoul Jazzとカテゴライズされることになります。ソウル・ジャズとは何かと言われると困るのですが、これにつきましてはwiki:Soul Jazzおよびウィキ:ファンキー・ジャズ(ソウル・ジャズ)に譲るといたしまして、個人的にはネットリとしたブルージーなジャズ、あるいはノリ優先の明るく楽しいシンプルなジャズと定義したいと思ったりします。理屈っぽくなく解りやすいので、ブラック・ミュージック全体を愛聴するリスナー層にはそれなりに受け入れ可能ではないかと思います。

これまでに紹介しましたルー・ドナルドソン作品は以下の通りです。

24枚目:Lou DONALDOSON  “Blues Walk”【1958】

132枚目:Lou Donaldson “Say It Loud”【1968】

今回の記事では、1作ではなく2枚のアルバムから1曲ずつ計2曲を紹介します。


Lou Donaldson “Hot Dog”【1969】
ルー・ドナルドソン 「ホット・ドッグ」【1969年】

パーソネルは以下の通り【参照:wiki “Hot Dog”】。

ts:Lou Donaldson

tp:Ed Williams
org:Charles Earland【wiki
g:Melvin Sparks【wiki
ds:Leo Morris【wiki

サイドマンは基本的にルー御大より一回りか二回り下の世代。70年代に大活躍するメンバーばかりですが、ジャズに逆風の吹いた時代だっただけに、名手揃いではあるもののそれほど知名度が高いとは言えないかもしれません。

4曲目収録”Hot Dog”。

iTunesのPlaylistにこの曲を入れておりますが、1,200曲ほど入っておりますのでなかなか特定の曲がかかることはありませんが、この”Hot Dog”がかかると思わず心が躍ります。ドナルドソンのノリノリのテナーでスタート。アドリヴ・ソロなのですが、波に乗ってスイスイと泳ぐかの如くノリノリ。アーランドの伴奏も同じことのシンプルな繰り返しなのですが個人的には彼こそがこの曲をお勧めしたい最大のポイントと思っております。3:00過ぎからウイリアムス。5:00過ぎからスパークス。7:00過ぎからアーランド。9:00過ぎにメロディに戻り、一瞬”Summertime”のフレーズをルーが吹いてみたり。抑揚が少なく、ダラダラと10分続くように思えるかもしれませんが、個人敵には底知れぬグルーヴを感じます。


Lou Donaldson “Everything I Paly is Funky”【1970】
ルー・ドナルドソン 「エヴリシング・アイ・プレイ・イズ・ファンキー」【1970年】

パーソネルは以下の通り【参照:wiki:”Everything I Play is Funky”】。

ts:Lou Donaldson

tp:Blue Mitchell【過去記事
org:Lonnie Smith【wiki
g:Melvin Sparks
b:Jimmy Lewis【wiki
ds:Idris Muhammad【wiki

今作では、ミッチェルやロニー・スミス博士など少しパーソネルにメジャー感が出ております。

2曲目収録”Hump’s Hump”。

かなりイレギュラーな曲調。エレクトリック・ベースが刻む変則的かつ武骨でシンプルなリズムの反復が、ベースライン至上主義者の感性を刺激してくれます。最初から最後までベース・ラインは不変。1:05からスパークス、2:10からミッチェル、3:15からルー、4:25からスミス。

今回取り上げた2作のアルバムのwikiの評価は星3つ。アベレージ作、あるいは凡作程度の評価となっております。個人的には平均的な作品とするこの評価は妥当だと感じます。モダン・ジャズ黄金時代のミンガスやマイルス、コルトレーン作品のように試行錯誤に挑んでいる作品とは異なり、ルー・ドナルドソン作品は基本的に音楽シーンの潮流に乗り、ノリを最優先にしているからです。特に今回紹介した2作は1960年代末/1970年代初頭録音作です。つまり、モダン・ジャズ黄金時代が終焉し、ロックあるいはR&B/ソウル・ミュージックに商業音楽シーンの主役を明け渡した時期の作品。爆発的なヒットをしたわけではないはずですが、1970年代に入って活動の場、録音機会を失ったジャズメンも多かった中で、ルー・ドナルドソンは生き残り、1960年代後半/1970年代もコンスタントに作品をリリースした点は注目すべきです【参照:wiki Lou Donaldson Discography】。内容的に考えて、すべてのジャズ愛聴家向けの作品とは言えないかもしれませんが、私のようなブラック・ミュージック全体史自体の愛好家にとっては、Jimmy Smith、Grant Green、Horace Silverらと並びルー・ドナルドソンは歴史的グルーヴ・マスターのひとりとして愛さずにはいられないということになります。

最後に。ルーは1926年生まれですので、マイルス/コルトレーンと同じ年生まれで現在90歳ということになるのですが、近年ではアルバムのリリースこそはありませんが、公式ホームページによればニューヨークでライヴ活動は行っているそうです。コルトレーンが亡くなって今年で半世紀。マイルス没後約四半世紀が経過しておりますが、ルーは元気にがんばってくれているのは嬉しい限りです。

2013年San Javier Jazz Fesでの”Alligator Boogaloo”。

日本人女性オルガン・グラインダー敦賀明子さん【wiki公式hp】が5:00過ぎからオルガン・ジャズらしいソロを披露。ドラムスも日本の方です。

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