変わり種Jazz【47】Betty Carter "’Round Midnight"【1963】

ジャズ・ヴォーカリスト作品の評価は基本的にとても難しいと個人的には強く思います。といいますのも、ヴォーカル作品はプロデューサーやアレンジャーの才覚が作品の出来に大きく影響するからではないかと感じます。マイルスやコルトレーン、ミンガス作品であれば、彼ら自身がサウンド作りにプロデューサー的な関与をしたはずですし、ドルフィーやモンクのような天然系ジャズメンはそもそもプロデューサーの言うことを聞くはずもありません。ですが、ヴォーカリストはバンドがいなければ輝きません。しかも多くの場合、バンドは大人数編成のビッグ・バンドです。ということは、当然アレンジャーが必要となります。つまり、ジャズ・ヴォーカリスト作品の場合、ヴォーカリスト個人の資質よりも、プロデューサー/アレンジャーの考え方がサウンドに大きく影響すると考えられます。結果として、気に入ったヴォーカリストを見つけたとしても、次に聴いた作品が今ひとつピンと来なかったなんて事態も起こり得ます。この辺りがヴォーカル作品選びの難しいポイントではないかと個人的には考えております。

ですので、ジャズ・ヴォーカル作品の魅力はヴォーカリスト個人の魅力はもちろんあるにせよ、アレンジャーやプロデューサーによって左右されると考えるべきです。これはヴォーカル以外のジャズやポップス/ロックにも当てはまりますが、ジャズ・ヴォーカルでは特にその傾向が強いと思います。個人的な見解ではあるのですが。フランク・シナトラはライヴで必ず曲毎に編曲者の名前をコールしたことで知られております。素晴らしい編曲を施した編者へのリスペクトの表明と考えられます。
アレンジャーの力量が曲の出来を大きく左右することをシナトラは知っていたのでしょう。

今回紹介するBetty Carter【wiki】は、1950年代/1960年代/1970年代とそれ以降も息の長い活躍をした女性ジャズ・ヴォーカリスト。ポジション的には、永遠の中堅どころといった感じでしょうか。ジャズ愛好家の誰もが認める名盤はないかもしれません。が、個人的には彼女の品のある声が大好きです。”‘Round Midnight”【1963】はサックス奏者にして名アレンジャーとしても知られるOliver Nelson【過去記事】を編曲に迎えて録音されました。


Betty Carter “‘Round Midnight”【1963】
ベティ・カーター 「ラウンド・ミッドナイト」【1963年】

パーソネルはwiki:Betty Carter “‘Round Midnight”を参照してください。

オリヴァー・ネルソンがアレンジを手掛けていると先ほど申し上げましたが、Claus Ogerman【wiki】と半分程度ずつ手掛けております。

2曲目収録”Who What Why Where When”。ネルソン編曲。

0:08の歌い出しからして魅力的。BluesともR&Bとも異なるジャズ的な唱法が心地よく耳に届きます。ネルソンのアレンジも小技が効いており楽しく聴けるはずです。

6曲目収録”‘Round Midnight”【名曲列伝】。こちらもネルソン編曲。

やはり抑制されたヴォーカル。ベース・ラインの素晴らしさも特筆すべき。1:18過ぎから少し雰囲気が変わります。2:28からまたもや印象的な展開。短い曲ですが、編曲者ネルソンの素晴らしさを知ることができます。

近年再発されたアルバムにはボーナス・トラックが収録されておりますが、そのうちの1曲”One Note Samba”。ジョビン作曲。

聴き心地の良い陽気なボッサです。

ここで話は変わりますが、ジャズ・ヴォーカル作品は名盤ブログで紹介するには帯に長したすきに短し的な作品が多々あります。実のところ、今回紹介した”‘Round Midnight”も紹介するのに若干の躊躇を感じなくもありませんでした。ついでと言っては何ですが、アルバム単位で紹介するほどではないけれど、一聴に値するヴォーカル曲をあと数曲紹介してみます。

Gigi Gryceの”Nica’s Tempo”【1955/wiki】収録 “Social Call”Feat.Ernestin Anderson【wiki】。

モダン・ジャズ黄金時代に「食っていけない」ことを理由にジャズ界を去り、教職に転じたアルト奏者/アレンジャー、ジジ・グライス作品に、女性ヴォーカリストのアーネスティン・アンダーソンが参加した曲。tp:Art Farmer/p:Horace Silver/b:Oscar Petiford/ds:Art Blakey。アレンジも素晴らしく、アンダーソンの声も心地よく。彼女もレコーディング・アーティストとして大成功したとまでは言えないかもしれませんが、ジャズ/ブルーズ史に確かな足跡を残した魅力的なヴォーカリストです。


Gigi Gryce “Nica’s Tempo”【1955】
ジジ・グライス 「ニカズ・テンポ」【1955年】

次も中堅女性ヴォーカリストLurlean Hunter【wikiなし/Discogs】が1960年に発表した”Blue & Sentimental”【Discogs】収録”Blue and Sentimental”。アレンジャーはJimmy Giuffre【wikiウィキ】。

ブルーズらしい気だるい感じが魅力的。ジュフリーのアレンジは少し官僚的な気もしますが、ハンターの唄を邪魔しない印象。


Lurlean Hunter “Blue & Sentimental”【1960】
ルーリーン・ハンター 「ブルー&センチメンタル」【1960年】

1895年生まれで1920年代から活躍していた伝説的ジャズ/ブルーズ・シンガーAlberta Hunter【wiki】が1961年に録音したコンピ盤”Songs We taught Your Mother”【Discogs】収録”Chirpin’ teh Blues”。

cl:Buster Bailey/tb:J.C.Higginbotham/tuba:Sidney De Paris/p:Cliff Jackson/ds:Zutty Singleton。チューバがリズムを刻むブルージーな曲。胸が躍ります。


Alberta Hunter “Songs We Taught Your Mother”【1960】
アルバータ・ハンター他 「ソングス・ウィ・トウト・ユア・マザー」【1960年】

ブルーズ寄りの少々偏った選曲になりましたが、こういった曲と歌い手さんに出会えるのもジャズの醍醐味のひとつだと思います。

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