名曲列伝【39】"Straight ,No Chaser"【1951】

今回紹介する曲は「名曲列伝【32】”‘Round Midnight”【1944】」に続く2曲目のThelonious Monk楽曲。モンクはエリントンに次ぎ、スタンダード曲を世に送り出したと言われることもある優れた作曲家でもありました。ですが、度々言及しておりますように、セロニアス・モンクは普通の音楽家ではありません。抽象的な言い方になりますが、モンクとは孤高の存在であり、私の個人的な印象ではジャズ仙人のような存在。誰とも似ておらず、唯一無二の存在。この点につきましては、是非ともご自身の耳で確認して頂くしかない訳ですが、モンクを知ることで音楽人生の幅は確実に広がるはずです。モンクの恐るべき超然さにつきましては過去記事で触れてきました。

天才の系譜【4】Thelonious Monk/セロニアス・モンク 

Jazz探究【10】Thelonious Monk “Brilliant Corners”【1958】 

ジャズメン御一行様、来日ス【5】Thelonious Monk In Tokyo”【1963】

巨人、邂逅ス【18】”Art Blakey’s the Jazz Messengers with Thelonious Monk”【1957】

モンクは他の誰とも異なる演奏を聴かせてくれたのと同時に、他のどの作曲家とも異なる楽曲を多数残しました。以前紹介した”Round Midnight”は個人的な印象になりますが、実はそれほどモンクらしさが強くないと言っても良いのではないでしょうか。モンク楽曲は基本的に聴けばすぐに「モンクらしいなぁ」と感じるはず。そのモンク印が”Round Midnight”はあまり濃くないといった感じです。

今回取り上げます”Straight,No Chaser”はモンクのキャリアを代表する曲のひとつ。独特のメロディから始まるモンクらしさに溢れた曲です。

最初に紹介するのはもちろんモンク本人バージョン。スタジオ録音/ライヴ録音を合わせて、かなりの数の録音をモンク自身は遺しております。

初出は1951年録音版。p:Thelonious Monk/as:Sahib Shihab/Vib:Milt Jackson/b:Al McKibbon/ds:Art Blakey。”Genius of Modern Music Vol.2″収録。

ブレイキーのシンバルでスタートし、モンクのピアノがメロディ。アルト/ヴァイブが加わりアンサンブル。0:53からモンクのソロ。1:28からシハブ。1:45からミルト・ジャクソン。


Thelonious Monk “Genius of Modern Music Vol.2″【1951】

もうひとつモンク本人音源。以前紹介した“Monk In Tokyo”【1963】収録バージョン。ですが、この音源は埋め込み禁止設定のため、直接Youtubeで試聴してください。p:Thelonious Monk/ts:Charlie Rouse/b:Butch Warren/ds:Frankie Dunlop。ラウズ/モンク/ウォレン/ダンロップの順でソロを取ります。

個人的に一番完璧に思えるのがこの”In Tokyo”バージョン。ベース/ドラムスのリズムが堅実で、何よりもラウズが終始快調。先ほどの1951年バージョンと比較するとモンクの朴訥さがかなり強くなっているのが解ります。


Thelonious Monk “Monk In Tokyo”【1963】

次はキャノンボール・アダレイによる録音。“The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco”【1959】収録。as:Cannonball/cor:Nat Adderley/p:Bobby Timmons/bSam Jones/ds:Louis Hayes。

興味深いことにこのバージョンは、サム・ジョーンズのベースでスタートします。その後もずーっとジョーンズのベースが目立ち続けます。このバージョンの核はジョーンズです。0:35からメロディ・ライン。1:00からキャノンボールのソロがスタート。中途半端にキャノンボールのソロが終わり、3:30からナット。5:45からティモンズ。8:30からそれまでリズムを刻み続けたサム・ジョーンズがソロ。8分半リズムを刻み続けての上でのソロです。凄い男です。

このバージョンはキャノンボールがキャノンボールらしく吹き、ナットも同様。ティモンズはいつものように後半になればなるほど情熱的になっていきます。そして、もはや言うまでもないサム・ジョーンズの職人技。モダン・ジャズ黄金時代を象徴するような名演だと思います。こんな演奏が聴けたら素晴らしいでしょうね。


“The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco”【1959】

次はちょっとした変わり種。Oscar Peterson “Live at The Northsea Jazz Festival 1980″【1980/wiki】収録バージョン。p:Oscar/Harmonica:Toots Thielemans/g:Joe Pass/b:NHOP。

ピアノ/ハーモニカ/ギター/ベースによるドラムスレス変則カルテット構成。楽器の組み合わせに聴き慣れないせいかガチャガチャして若干騒がしい部分もある気もしますが。シールマンス、オスカー、ジョー・パス、NHOP(スペルを打つのがめんどっちーので失礼)の順でソロを取ります。ハーモニカとかいらないから、もっとちゃんとオスカーのピアノを聴きてぇ~と思っても、フェス音源ですのでこれはこれで面白いと思うしかなさそうです。まぁ。でもハーモニカとジャズは音的に相性が良くなさそうと思います。


Oscar Peterson “Live at the Northsea Jazz Festival,1980″【1980】

“Straight No Chaser”のアルティメット・バージョンといいますか、最も著名なバージョンと言えば良いでしょうか、図抜けたバージョンと言えばMiles Davisの”Milestones”【1958/wiki】バージョンで間違いないと個人的には強く推したい所です。

この録音といいますか、このグループと言えばいいでしょうか、マイルス第一次黄金のクインテットにキャノンボールを加えたこのグループによる”Milestones”こそがモダン・ジャズ黄金時代のひとつの到達点と言えるのではないかと、マイルス狂人であるところの管理人は常々考えております。あくまでマイルス寄りのジャズ愛聴家の意見ではあるのですが、このアルバムの登場を持ってして、技術と才能のあるジャズメンをスタジオに集めて順番にソロを取らせれば名盤が生まれるという時代は終わったと個人的には考えております。極論ですし、実際には今作以降も「技術と才能のあるジャズメンをスタジオに集めて順番にソロを取らせ」た名盤は多数生み出されましたし、この作品自体も基本的には同じ構造です。ですが、一方でただジャズを演るだけではなく、明確なコンセプトを持ってアルバム作りをするという考え方が登場し、今作の次にマイルスは“Kind of Blue”を発表しました。今作に参加しているコルトレーンも独立後は同じ路線を歩みます。これはただ単にリズムに乗せてアドリヴを披露するという形式からの脱皮を意味し、ジャズが明確にステップアップしたのは”Milestones”以降であり、逆に言えば技術と才能のあるジャズメンをスタジオに集めて順番にソロを取らせる形式の到達点が”Milestones”であり、文字通りモダン・ジャズ発展の「里程標」となったと考える訳です。実は今回”Straight o Chaser”を取り上げたのは、この”Milestones”の偉大さを再確認してみたかったからでもあります。

tp:Miles Davis/ts:John Coltrane/as:Cannonball Adderley/p:Red Garland/b:Paul Chambers/ds:Philly Joe Jones。

P.C.のベースラインが素晴らしいのは当然のこととして、冒頭のアンサンブルでアルト・サックスとテナー・サックスの作り出すハーモニーの美しさ。この曲の持つモンクらしさを消し、クールなモダン・ジャズ化に成功していると私は考えております。0:30から最初にソロを取るのはキャノンボール。先ほど、ほぼ同じ時期に録音されたキャノンボール自身のクインテットによる演奏も紹介しましたが、こちらのブロウと比較すると抑制気味であるのが解るはず。1;50からマイルス。この時期のマイルスのトランペッターとしての技量については若干の争いがあると個人的には思っておりますが、今回は極めて平均的。P.C.のベースのカッコよさにより惹かれます。4:00から待ってましたとばかりに吹くコルトレーン。2分間のソロで彼は一体いくつの音を出したのかと思うほどの数珠繋ぎ。6:00からガーランド。8:00からP.C.。


Miles Davis “Milestones”【1958】

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